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2007.09.03 Monday

セルフライナーノーツ

『きみは死んでいる/その他短編(Aバージョン)』
セルフライナーノーツ

all text hasegawaayumu photo:ishizawa chieko(リンクフリー・禁無断転載)




■何故"きみは死んでいる"のか?(『きみは死んでいる』解説)


キーワード「天国」「引力」「愛してる」「痛い」「死」

「人間って馬鹿じゃん。すごい馬鹿で。たぶん、死んでからああすれば良かったって思うこと、沢山あると思うんですよ。死んでから本当のことに気づくように。だから二ノ宮が「死んでいる」のはギリギリの余白みたいな人生や、プレッシャーとしてタイムリミットを設けたかった。1回死んでるからこそ、本当の死が判るし、いつまた死ぬかわからないっていう二重底になってる。普通に生きてたときは死んだ理由が判るじゃないですか。二ノ宮はリンチにあって死んだ、って発言してるし。でもいまゾンビみたく「生きている理由」が判らない二ノ宮は、つぎいつ「どうやったら死ぬか」って理由が判らない。だから、彼は戸部に執拗なまでに「動いてる理由」を求める。現実で、人生を迷ってる最中の人間が「本当に大事なこと」に気づくのって、あんまりないと思ってるから。そういう二重底にすることで、逆説的に戸部にも「本当のこと」を気づかせる装置になってる。」


■mixiとかblogとか全盛の時代に「あなたの日記、最高に「糞」だなって話で盛り上がってたんですよ」って言われる「痛さ」

「オープニングで知らない男達が人の家に入り込んでて、mixiとかblogとか全盛の時代に「あなたの日記、最高に「糞」だなって話で盛り上がってたんですよ」って言われる。まさにその現代のいわゆる誰しもに通じる「痛さ」ってのもちゃんと入れてるし、笑えるようにしてるんだけど。同性から見るとあんまり笑えない痛さってのがあるみたいで、それは成功なんじゃないでしょうか。

書いてて最初気づかなかったんだけど、この物語は冒頭、戸部が結子に「愛してる」って電話口で言い、二ノ宮も戸部に「まだ愛してる」と伝える。みんながみんなに「愛してる」っていうんだけど、誰一人信じてくれない悲しい世界なんだよね。だから戸部が人を殺してまで叫ぶ瞬間、振り切れて「欲望丸出して愛してるとか、ただの念仏のくせに引力とか天国だとか馬鹿じゃねーの」と全てを否定して叫んだあと、彼は「友人を天国に行かせてあげようと死体の口の端を曲げる」んです。そのあと自殺を止めようと電話越しに「愛してるってゆってんじゃん!」って叫ぶんです。そこには揺れと矛盾がすごいある。その矛盾すら引っ括めて「本当」なんだと僕は思います。それで目の前でどんどん人が死んで行く死がありつつも、最後に戸部はまた「愛してる、本当なんだよ」って結子の自殺を止めようと伝える。寸前まで、二ノ宮を天国にいかそうとしていた訳だし、それが「本当の愛」かどうかは戸部すら判ってないと思うんです。でも言わなきゃいけない。目の前でこれ以上人が死んで行って欲しくない、それは全然冒頭と響きが違う。それが「本当」に聴こえたかどうかは、お客さんの感じ方次第でいいと思います。それが余韻であればいいな、と。

僕はその日の演技の度に毎回感想が違いましたけど。そういう自由度も含めていいなって。ああ、今日は結子は助かるな、とか。ああ、今日は結子飛び降りちゃうな、とか、いろんな感想がお持ちかも知れませんが、ぼくはその「本当」が「本当」に聴こえた日だけ、結子は助かる気がしました。」

「ラスト、男1はA、Bともにうつ伏せに倒れてるので表情は読めないのですが、天国に行けたと思いますか?男1が本当に天国を信じていたかって話。信じているべき役がどこか猜疑心と隣り合わせって生々しさが男1の魅力だと思います。だから最後の言葉が「天国マジあった」と二ノ宮の天国に驚いてるのか、喜んでるのか判らない。」


■「天国」と「引力」について

「気づいてた人は完全に気づいてただろうけど『ジョジョの奇妙な冒険』第6部から、完全インスパイアされてます。個人的にインスパイアはパクリではなくてアンサーであるべきだと思ってるので、「天国」「引力」というキーワードは拝借してますが、ぼくの世界に落とし込んでいます。特に「チャンネルを合わせる」という作業は完璧オリジナルですから。こういう一見、ファンタジックだけど現実で使われている言葉をどう劇中の生活に混ぜるかを考慮しました。いい意味で「ん?」って違和感になればいいなって位置から挿入してます。それが後半「死にたくなった?死にたくなったら言ってよ、天国にいかせてあげるから」ってセリフに着地して来る瞬間。客席の自分に言われた気がしてドキッとするでしょ。」

「短編集だから、とか。小劇場・演劇だから、とか。そういう括りで、ちまちま半径5メートルの安い恋愛の話ばかりしてるのをぶっ壊したくて。同じ恋愛を扱っても、絶対スケールの大きなものにしようと目論んでました。そしてそれが短編ってことでうまく未知なブラックボックスで描かない部分として想像力を刺激すればいいな、とも思ってました。コミューンの背景とかあれ以上書いたらやりすぎな気がするんですよね。あと戸部が男を刺した後、逃げるんですけど、カメラ(視点)があそこで彼らにパンしたら、それは三流、いや5流8流のテレビドラマだなって思って、絶対しない。あのあと交通事故に遭うって切り返しも、全ては起承転結をどう刻んで客の予想を裏切り、ストーリーの期待に答えるかで計算してます。突然?でも「死」ってそういうもんじゃんってのも計算して折込んでる。」

「暴力に対して「すげー無力で、すげー嘘で、これが現実」と『戦争に行って来た』で五味の言う世界が『きみは死んでいる』なのかなって気がしてます。ファミレスの窓の向こうの世界。どんどん常識からズレて人が死んで行き、愛が伝わらなず誰にも信用してくれない、無力で悲しい世界。」




■『×』=エクスタシー(『×』解説)


「『×』は「罰(ばつ)」か「罰(ばち)」って両方の読み方で哲子と武田がもめているシーンがあるんですけど、結果的にそれらを贖罪として生きてるうちに「×」=エクスタシーになっちゃってる人を描きたかった。海外でクラブとかで食べるエクスタシーってドラッグの通称が『×(バツ)』なので、それとかけてます。野田英樹先生このネタ褒めてくれないかなー(笑)とか密かに思ってます。

設定だけ見たら、谷崎潤一郎を彷彿させるような倒錯の世界なんですが、そこはあくまで根底にしつつライトに。洗濯機とか回ってるのを眺めてるのが、僕は好きなんですが、ああいうぐるぐる回ってる感じで「河」と「小屋」と中心に「河にいそうな人々」を(実は機械的に1ページずつで)ぐるぐる回しています。配役だけみると、作者の「河にいそうな人々」はどんだけマッドなんだって感じですが。すっごいディープな吉本新喜劇みたいな温度がいいなって思ってました。」

「『嫌われ松子の一生』を映画で見た時、結局行き当たりばったりの馬鹿女にしか見えず全然面白いと思えなかったんです。んー、あいつが何と戦ってたのか判らないし、反省もないから愛着も感情移入ももてなかった。松子が結果カタルシスを得る「妹が許す/許されない」っていう謝罪の軸が描写不足で適当過ぎた。だから、哲子はそれに対抗して産まれたキャラでもあります。彼女は原罪が判ってて、謝罪の仕方が判らないってぬるさと、自覚のある地獄具合がリアルでいいなって。ぶっちゃけ「あたし劇団を一個ブッ潰してんのね」って掴み、いまの小劇場であるか?ないよね?どんな掴みだよって話だけど、こんな個人的だけどディープな悩み絶対関わりたくないもん(笑)乞食の康夫が「謝罪の仕方が判らないなら、祈れ!」って服を脱ぐシーンが好きです。本当、せめて祈るくらいしろよって感じ。どーせ無料だし、それくらいいいだろ。やってくれよって感じ。」

「アンケートで<気になったキーワード>で「人を助けに行った」って回答があって、理由が「助けに行ってて欲しいから」と記入あり、ちゃんと届いてるなーと実感。そう、余韻度でいえば『×』のラストは最高で、哲子の「どっちだと思う?」って客席に思いっきり投げかけて終わる。短編の醍醐味だよね。佐々木なふみ演じる哲子は、このとき凄い目をしていて、切ない表情で、ぼくは恋に落ちそうでほんとに頭がおかしくなりそうになる。」




■本当は誰に『穴』が空いていたのか?(『変な穴』解説)


「初演のでは金持ちに圧倒的に穴が空いていて、彼が巻き込む典型的なパニック症候群手前なワンシュチエーションコメディだったんだけど。今回セルフリメイクに当たって、ドレイの中心を中年層に変えたキャスティングで繰り返しやっているうちに、前と同じ方向で「笑い」を中心にやるのは止めようと思ってきました。まあ「笑い」は欲しいんだけど、中年から滲み出る「悲哀」に焦点を当てたいなと(笑)

まあ、以前は感情移入が一切出来なかった金持ちの役も、小松くんが演じることにより人間味がまだある。なんていうのかな、「穴が空いていると思い込んでる」方がより違う意味で危ないなって。本当に穴が空いているのは山内な気がしてなりません。中年でドレイで飯喰いつつも、コンビニのバイトの女子高生に惚れてる(笑)ある意味、彼が主人公って目線も多いにあり得る。」

「心の「穴」ってのはキャッチーなワードなのか(まあ狙ってるんですけど)、アンケートでも1、2位を争う届き方をしてました。脚本も耐久力が産まれて来てよかったです。どなたかやりたい劇団ありましたら連絡下さい(本気)。本編30分だからさあ、高校生とか高校演劇のコンクールでやって欲しいよね。高校生が学校サボって、棒でボコボコに殴られて金もらってるシーンみたいよね〜。そんで審査員の坂手洋二さんとかがどんな顔するか見たい(笑)。全国のドレイ志望の高校生のみんな、よろしく!」

「最近、お酒の席でもSとかMとか二元論で語りたがる輩が増えて本当困ってるのですが、もっと曖昧で「信頼」というラインが小松から自然と出て来たラストは好きです。彼はたぶんまた、偽名と整形を駆使してドレイチームを作るでしょう。それはきっとあなたの街にあるかも知れませんね。(ってどんな締めだよ)」


>>セルフライナーノーツ<Bバージョン>
■再び『きみは死んでいる』ことについて。(『きみは死んでいる(女×女)』解説)
■ミスチルを完全否定したい訳ではないけど、ミスチルって面白いよねって言えない世界が恐い。(『90%VIRGIN』解説)
■左とか右とか全部無し。「戦争」を扱いながらもイデオロギーとかがない新しい会話劇。(『戦争に行って来た』解説)



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→『きみは死んでいる/その他短編』公演情報TOP →http://www.mu-web.net/

■本公演はCSTV「theatre plateaux(テアトルプラトー)」で放送決定。見逃した方はそちらをお楽しみに。
■短編集の戯曲(台本)を近日発売予定。併せて上演を希望される団体(劇団、学生問わず)はお気軽にお問い合わせ下さい。
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